【アイデアノート】第二十話 予兆

◆予兆

晴れ男は今日も病院に来ていた。まだ面会謝絶で身内しか中に入れない状態だった。
椅子に持たれてぐったりしていると、誰かが病室から出てきた。

「あら、あなたは・・・」

友人Aの母だった。晴れ男は姿勢をただし、

「お、お久しぶりです。この度はお見舞い申し上げます。」

「いえいえ、来てくれてありがとうね。あの子もちょっと頑張りすぎるとこあるから。でも先生が、意識もじきに戻るだろうって言っていたし、命にも別状ないみたいだから本当によかった。」

「・・・」

「意識がないのにお見舞いに来て下さる方が、たくさんいらっしゃって、あの子は幸せだよ。本当にありがとうね。」

「いえ、自分は来ることしかできませんから。」

「そんなことないですよ、感謝してます。それにあの子、あなたの話ばかり家ではしてますからね。なんだか身近に感じてしまって・・・すみません、しゃべりすぎですね・・・」

「いえ、自分なんて友人Aに怒られてばかりで、本当にダメな人間です。」

「え、そうなの?あの子はあなたの悪口なんてひと言も言わないわよ。むしろ逆。 今日あいつは、こんなアイデアを言ってきたって嬉しそうに話してますよ。それに、ゆくゆくはあなたと事業を立ち上げたいなんて言ってて、本当にあの子は勝手なんだから。」

「え、そんなことを・・・」

晴れ男は、扉の方に一瞬目をやり、なんだか溢れ出そうな涙をこらえていた。友人Aの母は、そんな様子に気づいたのか、すぐさま、

「あら、すみません。私なんだか余計な事ばかり言ってしまって。ちょっと疲れてるみたいです。気にしないでください。」

晴れ男は、かすれた声で言った。

「そうではないんです。嬉しいんです。本当にありがとうございます。」

もう涙を止めることが出来なかった。友人Aの母も、涙を少しため、こう言った。

「本当にあの子は幸せもんだよ、こんないい人にめぐまれて・・・」

その時だ。病室の方から、声と言うか音がした。二人はハッとして、病室に駆け寄る。

病室に入ると、友人Aの目がかすかに開いていた。友人Aの母はすぐさま、友人Aの手をとり、声をかける。晴れ男は、ナースセンターに急いで向かっていた。友人Aは意識を取り戻した。

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