【アイデアノート】第十八話 過去

◆過去

晴れ男は考えていた。いつものアイデアの事ではない。自分の事についてだった。
自分は他とは違うと思って生きてきて、今でもそう思っている。
         *
そもそも晴れ男の家は貧乏だった。
ボロアパートの一室で育ち、学校へ行くのも苦痛でしかたなかった。別にいじめられたわけではない。普通を装っていたが、とにかく心の中で想うことは、周りの同級生が、自分とは違う世界にいる。自分とは違うという事だった。
         *
小学3年生の運動会。子供なら楽しみなイベントだが、晴れ男はそうでなかった。
午前の部が終わり、お昼のチャイムが鳴る。
みんな、親が「〇〇ちゃん」と呼びながらいなくなる中、晴れ男だけポツリと一人で椅子に座っていた。晴れ男は仕方なく、家に一人で歩いて帰った。家につくと、炊飯ジャーを開けご飯をついで、納豆ごはんにし食べる。

そしてそのまま、また学校へ戻る。何もなかったように運動会の午後の部が始まる。悲しかったがそれが当たり前だった。普通だった。
         *
大人しい子で、普通の子ですよと先生に言われていたが、心の中では、この生活から抜け出したい、それには自分でなんとかするしかない。そんな想いでいっぱいだった。
最初に書き始めたのが、格闘ノート。

自分でできるようになるためには、自分が強くならなくてはならない。そこで、どんなケンカにも負けないように、格闘するためのノウハウを自分で考えてノートに書きつづった。

そう、自分で創るという精神が小さい頃から養われた。それは逆にそういった家庭環境にいたからかもしれない。遊びも他の子と違った。おもちゃなんて買ってもらえない。しかも、当時流行ったテレビゲームなんてやったことがない。子供のころの遊びは、スポーツカーの形に似た石を探して、砂で山を作って、トンネルを作って、その石を走らせていた。

「ブーン、ブーン」

ひとりで真っ暗になるまで遊んでいた。

そんな晴れ男がアイデアを考えるようになったのが、お笑い芸人だった。テレビを見ていると、お笑い芸人が人を笑わせる。その発想が自分の創ることと似ていた。

ネタを考える(新しい発想)
 ↓
コントをする 漫才をする
 ↓
人が笑う

それから晴れ男はノートを書くようになった。

ネタ帳ではなく、「アイデアノート」だ。大人しい自分は、お笑い芸人にはなれない。
だったらビジネスをするしかない。それにはアイデアだ!

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