【アイデアノート】第十六話 友人Aとの会話

◆友人Aとの会話

会社が終わってから、友人Aのオフィスに通うようになって、一週間が経とうとしていた。
晴れ男は、黙々と作業に集中していた。

「お疲れ様です。」

何人か帰ったようだが、晴れ男は気にせず仕事に打ち込んでいた。
時間がどのくらい経っただろうか。ふと、肩をポンッと叩かれ、声をかけられた。

「あまり無理するなよ。」

友人Aだ。

「あ、お疲れ様です。」

「明日も仕事だろ。」

「もうこんな時間か・・・」

時計の針は12時をまわっていた。

「おまえの集中力はすごいよな。昔からそうだった。」

「夢中になるとはまりこんじゃうんで・・・」

「それがいいところなんだけどな。」

「はぁ、まあ自分は突っ走っちゃうんで、失敗ばかり・・・」

友人Aは近くの椅子を持ってきて、ゆっくりと座り込んだ。

「おまえは、何をしたい?」

「え?」

「色々と起業のアイデアを考えてたみたいだけど、おまえ自身はどうなりたいのかってね・・・」

「あぁ・・・なんだろう・・・何も考えてないかも・・・」

「まあ人が動くのって理屈じゃないからね。それはいいさ。でも、自分がこうしたいって思うことに一生懸命になれるっていいね。」

「・・・」

「ほとんどの人が考えてない事だよ。というか、分からないっていった方がいいかな。」

「う、うん・・・」

しばらく沈黙が続き、友人Aが話し始めた。

「おまえ覚えているか?」

「ん?」

「高校3年の県大会のこと。」

「ああ、きみが優勝したときの試合だね。」

「試合前、みんな俺に期待して、がんばって、がんばってっていう中、おまえだけだったよ、あんなこと言ったの。」

「え?覚えてないな・・・」

「あはは、おまえ、負けたっていいじゃん、楽しんじゃえよって言ったんだぜ。」

「あ、そ、そうなんだ。」

「あの緊張感の中、お前だけが笑ってたよ。」

「・・・」

「いや、ふっきれたんだよ、その言葉でね。」

「・・・」

「おまえ、やれよ。」

「ん?」

「もっとアイデア出せよ。」

「うぅむ」

「アイデア考えてる時、夢中になれるし、楽しいだろ?」

「うん」

「それがお前だと俺は思うよ。」

「・・・」

まさか友人Aからそんな言葉が出るとは思わなかった。晴れ男は、帰りの道中、久しぶりに星空を見上げながら歩いていた。

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