【アイデアノート】第十四話 咲子からの電話

◆咲子からの電話

あれからどれくらい経っただろう。

晴れ男は普通の日常を送っていた。
アイデアノートやアイデア箱フォルダは捨てられていた。友人Aとの連絡もとってなかった。

ある雨の日、会社から帰ってきて、いつものようにご飯を食べていると、携帯が鳴った。
咲子からだった。

「もしもし」

「お久しぶりです、咲子です。」

「あの男、また出てきました?」

「いえいえ、そうではないんです。」

咲子の話によると、あの一件の後、友人Aが訪ねてきて、同じことが起きないように色々と相談に乗ってくれたということだった。初めは、センサーライトの設置、監視カメラの設置をさせて下さいと言うので、いやいやそれはいいですと断った。実は、咲子は実家が近いので帰るつもりだったらしい。その旨を伝えると、引っ越しの段取りから費用まで友人Aがすべて仕切ってくれたという。そのお礼がしたかったが、友人Aはかたくなに断った。それで晴れ男に、お礼の品を友人Aに渡してほしいとの事だった。

「そ、そうなんですか・・・」

「本当は直接お礼がしたかったんですけど・・・」
「いえいえ、こちらこそ私の不備のせいで何と言っていいやら。」

友人Aとは連絡をとってないとは言えなかった。咲子は、晴れ男のところにお礼に来るというので、晴れ男はその気持ちだけ友人Aに伝えておきますと言った。咲子は、何回もお礼を言い、電話を切った。

さて、友人Aに連絡しなければ・・・でもなんといえばいいんだろう。というか、友人Aはそこまでしていてくれたのか。なんて自分は小さいんだろうと実感した。そんな矢先だった。携帯が鳴る。今度は友人Aからだ。

晴れ男は、慌てて携帯をとった。頭の中はパニックだ。

「は、はい・・」

「おお、もう家か?」

「そうです」

「ちょっと、仕事が間にあわねぇんだ。おまえ副業して手伝ってくれない?」

「え?ええと・・・大丈夫だと思う。」

「詳細は後日。会社にはばれないようにするから、よろしく。」

「はい!」

晴れ男は、友人Aに咲子の事を言えずに電話を切られてしまった。
先日のことは何もなかったかのように、あっけらかんと仕事を頼む友人A。それをどこか嬉しさを感じながら聞いている晴れ男。自分のやったことが解消されたわけではない。ただ、少し前進したことを感じる晴れ男であった。とにかく地道に仕事をして、友人Aの力にならなければという思いだった。友人Aにもこの仕事を晴れ男に頼んだ意図があった。そう、この友人Aと一緒にやるプロジェクトが、また晴れ男を変えていく。

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