【アイデアノート】第二話 コールセンター

◆コールセンター

晴れ男はいつものように会社に行った。
パソコンの前にずっと座っている地味な仕事だ。晴れ男のパソコンのデスクトップには、あるフォルダが置いてある。そのフォルダの名前は「アイデア箱」。仕事の合間にそのフォルダを開く。

〇年〇月〇日メモというテキストがずらーっと並んでいる。今日も10月1日のテキストを作成し、なにやら書き出した。

・人が困っていること
・解消されると便利な事
→ 病院の待ち時間
※予約制になってきたが、まだ待ち時間がある
お年寄りは、ネットを使いこなせない

晴れ男は考え込んでいた。まるで、真剣に仕事をしているようにも見える。仕事をさっさと終わらせ、自分のアイデアをまとめることに夢中だ。
晴れ男はしばらくすると、ハッとした顔で、キーボードを打ち出す。テキスト文書に書かれたのは、

病院案内コールセンター

すぐさま、チャットを立ち上げる。

「ちょっと、いいですか?」

「なに?」

「病院案内コールセンタープロジェクトをやろうよ」

「え?なに?忙しいんだけど」

「病院って混んでるじゃん!そこで、市内の病院の混みあい状況をネットで把握して、コールセンターで、ここが今空いてますよ、待ち時間は何分ですよと伝えて、予約を取ってくれるシステム」

「・・・」

「さらに言うと、病状によって、何病院の何科がいいですねって、おすすめする」

「あのなぁ、まず、市内の病院の混み合い状況を把握するには、各病院に今何人患者がいるか、予約が何人かという情報を入力してもらわなくてはならない。それに、大きな病院ではそんなシステムを導入する手立てがない。」

「・・・」

「それと、コールセンター。何人の人を養わなければならない?それに医療の専門知識があるといったらもう大変だ。どっちかっていうと、そのコールセンターへの繋がり具合の方が混み合うぞ。」

「・・・」

「それに、人の命がかかってるんだ。曖昧な案内はできないぞ。それこそ責任もんだ。」

「そうかぁ、ちょっと考える」

晴れ男はチャットを閉じる。そして、テキストにこう書く。

医療は難しい
居酒屋コールセンターならどうだろうか
→ 後日考える

医療に責任問題が生じるなら、居酒屋ではどうか。敷居も下がるのではないかと考える晴れ男。どの業界にも責任は生じる。そこで、医療の問題をどうするかという根本を考えるのではなく、次の手段は何かと考える。しかし、これには理由もあった。一人でできること、自分の責任範疇の中で事業を起こす。失敗したら自分がそのダメージを受けるだけ。そんな思いで考えていた。しかし実際は何かしら他人に迷惑をかける。彼はまだそれに気づいていなかった。

サラリーマンである晴れ男には、仕方のないことなのかもしれない。誰もが口で簡単にアイデアを言うが、それに責任を持つ人はいない。また、他人がやっていることに批判を言う。それであたかも自分も同じステージにいるという錯覚。それは常人が持つ当たり前の感覚だ。

でもまあまず、友人Aをコールセンターのように使っている晴れ男の態度を改める方が先かもしれない。友人Aにも都合がある。いくら友達でも頼りすぎの限度がある。晴れ男にはそんな感覚は全くなかった。

 

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