【新人君】第七話

第七話(最終話) 退職

新人君は、みんなの前に立っていた。

「この度は、お世話になりました。家庭の事情で、今日を持って退職することになりました。」

退職のあいさつだった。
いつものように淡々と話をする。

「一時、ハッピータイムをしていた時がありましたが、その時の自分の気持ちを大切にして下さい。きっとそれが組織を作る基盤になると思います。」

最後に本当にお世話になりましたと言い、あいさつは終わった。

新人君がいなくなった後、新人君のパソコンのデータを整理している人が、大きな声を上げた。
「おい、来てみろよ。」

そこには、ハッピータイムの発言をいつ、誰が、何を言ったというのが記録されていた。
「あ、あいつ・・・」

「たぶん彼は、見た目よりずっと、会社の事を想っていたんじゃないかな・・・」

「惜しい人材だったよ・・・」

すると、談話室のテレビをつけろ!と部長が開発部に叫びながら入ってきた。
テレビをつけると、あの新人君が会見を受けていた。

大手○○企業の社長が病気で倒れ、入院している間、急きょ息子の新人君が、代理社長をするという会見だった。

記者は言う。
「その若さで経営というものがわかりますか?大丈夫ですか?」

すると新人君は、
「大丈夫です。弊社は組織が出来ていますから。それぞれの役割がそれぞれにあるので、私はそれを調整するだけです。」

「組織というと、お父様(前社長)は、垣根のない世代という事をよくおっしゃっていましたが、それは理解されていますか?」

「はい、それは熟知しております。
まず、アナログ世代、デジタル世代や、団塊の世代、ゆとり世代とか言われますが、それは会社にとって弊害にはなりません。どちらかというと、それを区別し始めることが弊害となり、組織を崩します。」

「難しいですね。どういうことですか?」

「要するに、垣根を作っているのは自分たちで、実は〇〇世代なんてないんです。同じ会社に入ったなら、同じ目標に向かうだけです。苦しみを共にし、同じ方向を向いてればいいんです。上の者は、ただその方向を良い方向に向けてあげるだけなんです。」

「良い方向というのは?」

「ポジティブに考えることです。些細な事でも良いことだと感じる人間は、ポジティブに考えることができます。個がポジティブになれば、組織はおのずとポジティブな方向を向きます。ただそれだけです。」

会見は続いたが、テレビを見ていた部長を初め、社員たちは、ハッとさせられた。

ある社員が言いだした。
「ハッピータイム、またやってみませんか?」

「そうだな。」

みんな声をそろえてハッピータイムの復活を希望した。

それからだった。
このIT会社は急成長を遂げる。

そこには、社員間での垣根がなかった。そう、立派な組織ができていた。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA