第六話 限界
ハッピータイムも1週間も経つとみんなネタがなくなってきた。
嬉しいことも楽しみも探す苦労の方がきつい状態だ。
みんな、自分の楽しみを見つけようと必死になった。
もう些細な事も良いことだと言うようになり、中には、ハッピータイムのネタを思いついたという喜びを発表する人もいた。
ただ、新人君だけは淡々と違うネタを連日話していた。
社員の中には、もうやめて欲しいという意見が出始めていた。
それは部長も同じだった。
新人君は、また部長に呼ばれた。
「キミ、ちょっと残念だが、ハッピータイムをもうやめることに決定したよ。」
「あ、そうですか。」
「やっぱり、そっちに時間をとられてしまって、仕事に支障をきたすという意見があったくらいだから。」
「いえ、それは上の方で決めて頂くのが当然かと私も思います。」
「そうか、じゃあ明日、その旨をみんなに伝えるよ。」
「・・・あの。」
「ん?なんだ。」
「実は、ちょっと違う件でお話しがありまして。」
「言ってみろ。どうした。」
「私の父が倒れまして、どうしても稼業を継がなければいけないんです。」
「・・・!」
「すみません。こんな中途半端な状態で、義理も果たすことができなくて・・・」
「そうか・・・とても残念だ・・・」
部長は眉間にしわを寄せながら、談話室を出た。
新人君は、身の回りの整理をし始めた。
入社して1年も経たない時だった。