【やさぐれ】第十三話

青年は、ある計画を考えて、齋藤オフィスに出社した。

その計画とは「齋藤貴雄 記念館」の設立だった。
スタッフたちは賛同してくれた。

提案はすぐに本社に上げられる。これも齋藤オフィスの社風だった。

後日、齋藤氏が来て会議を開くことになった。

そして、その提案は実現することになった。

個展が開かれてもうすぐ一年。
閉館した展示会場を青年は歩いていた。向かう先は『故郷』の展示されている場所だった。

向かっていくと、一人の老人が『故郷』の前に座っている。齋藤氏だ。

「あ、お疲れ様です。」

「おお、西山君か。」

二人は『故郷』を見ながら話をした。
齋藤氏はこう言う。

「この絵にはある想いがあってな。」

「??」

「山と海、こんないい街を眺めているとホッとするよ。」

「・・・」

「この街は郊外にある山と、海に近い繁華街がずっと対立しててな、お互い足の引っ張り合いをしていたんだよ。まあ今でもそうかな。」

「・・・」

「でも、こうして一面に描いてみると、一つの街なんだよ。山も海も含めて一つの街なんだ。」

青年は、海原組と大山組のことを思っていた。
齋藤氏は続けて言う。

「争いはお互いを強くする。それが自然の摂理なのかもしれない。でも人間のやってることは違う。進化がないんだ。動物だって、争いに勝てるように進化をしていく。いや、逃げる能力も進化かもしれない。でも、人の争いは進化ではないんだ。奪い合いなんだ。」

青年は黙って聞いていた。

齋藤氏もじっと絵を見つめていた。

そんな二人を『故郷』が温かく見守っていた。

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