そこでは、ららぽーとの人間が2人いた。料亭の一室だった。
齋藤氏と取締役と青年が出席した。青年は、部屋に入る。
「・・・!」
そう、2人のうちの1人は、あの鈴木竜だった。
しかし、気づいていないのか、鈴木は青年の方を見もしなかった。
会談が始まる。
どうやら、移転の方向で資金の話やら、会場のイメージやらを話していた。
齋藤氏は黙っている。
もちろん青年は、話す隙もない。ただ黙って聞いていた。
話も終わりかけたころ、鈴木が聞いてきた。
「ところで、先生も異存はありませんね。」
「・・・」
「では、そういう形で・・・」
齋藤氏が初めて口を切った。
「いや、『故郷』だけは今の場所に置く。」
一同唖然としていた。すると、鈴木の相方が、
「先生、『故郷』は今が旬の・・・」
鈴木が相方の話をさえぎって言う。
「先生、それはどういった心境ですか。」
「街中商店街とか発展とかそういった意味はない。ただ『故郷』は今の場所で見てもらいたいだけだ。」
「そうですか。先生がそうおっしゃるなら、ちょっともう一度、こちらで案を考えさせて下さい。」
そういって、話し合いは終わった。
帰り際、誰かが服を引っ張る。振り向くと、鈴木がいた。
「西山、この後時間あるか?」
小声で言う。
「は、はい。」
「じゃあ、9時にこの店に。」
紙切れを渡された。それは店の名刺だった。
こうして、鈴木と西山は再会したのであった。