【やさぐれ】第七話

大型商業施設「ららぽーと」の進出決定!
 齋藤画伯の絵画展示会場も移転も視野

地元の新聞には、大きく見出しが書かれていた。

朝起きると、母がその記事を読んでいた。
ふと自分に気づくと声をかけてきた。

「今日でしょ?協議。」

「ああ、俺も齋藤オフィスのスタッフとして出席する。」

「お母さんも自治会の役員で行くよ。」

そう今日は、絵画展示会の移転について協議することになっていた。
市長他、齋藤オフィス、街中自治会、商工会議所、そして、ららぽーと建設委員だ。

市役所の3階にある会議場でそれは行われた。

中心となる席には、ららぽーと建設委員と市長他が勢ぞろいし、その横に齋藤オフィス、街中自治会と商工会議所が対面する形で並べられていた。

議論は白熱した。
ららぽーと建設はもう仕方がない。しかし、展示会場は移転する必要はないだろうと、街中自治会と商工会議所が言う。
もともと、市長が今の場所に招いたのだから。

しかし、ららぽーと建設委員は、市全体の活性化、他県から足を運ぶには一極集中が最適だと言う。
どちらにせよ、齋藤氏の名前や今回の作品「故郷」は、ららぽーとで絶対的に必要であると。

双方の意見がまとまらない。
結局、齋藤オフィスはどう思っているのかと問われる。
齋藤オフィスの幹部が答える。

「齋藤氏もそうですが、この拠点の一番の目的は、地元に貢献することです。街中と郊外で意見がまとまらないうちは、なんとも答えようがありません。」

すると、ららぽーと建設委員の一人が「ちょっといいですか」とマイクを持つ。
青年は見たことのある顔に少し戸惑う。

「ららぽーと建設委員の鈴木です。」

青年は確信した。小学3年生の時、何もできずに別れた鈴木竜だ。

「今、この市は赤字経営です。このままいくと市全体が潰れてしまいます。みなさん、考えて見て下さい。今回のららぽーと計画が成功すれば、市全体に資金が潤うようになり、街中の活性化にもつながるんです。具体的な案はいくらでもあります。でもまず、市の財政の立て直しです。そのためにこのららぽーとの成功が必要なんです。展示会場が必要なんです。」

野次も飛ばせないほどの威圧感があった。言葉のひとつひとつに力がこもっていた。

青年は端の席に座りながら、なんとも言えない気持ちでいた。
あの、鈴木竜がここにいる。でも今更どうしたらいいんだ。
とにかく話したい。

しかし、協議が終わっても話しかけることはできなかった。
それは、何もしてあげられなかった罪悪感があったから。

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