【やさぐれ】第三話

個展が開場し、数週間が経った。
会場には子供から大人、老人まで来場があって、大盛況だった。

青年は、会場警備をしていた。
齋藤氏の絵画を毎日見れることで、生き生きと仕事に取り組んでいた。

齋藤氏は、開場の日に顔を出したきり、その後は一度も来ていない。
でも個展の中には、齋藤氏の激しい絵画がある種の緊張感をかもし出していた。

今日も仕事を終え、家に帰る。

帰るとなんやら、父と母が話をしている。

「大山組も最近活発だねえ。海原組が黙っていないだろ。」

「商店街の落ち込みから、海原組の勢力も落ちているらしいよ。」

「大山組は今度の計画が決定したことで、さらに勢力を持つねえ。」

どうしたのか聞いてみる。するとこうだ。

市の決定で、郊外にららぽーと(複合型大型ショッピングセンター)が建設されるらしい。
それでなくても駅前商店街はさびれていて、店じまいをする店舗も多数あった。

そのららぽーと建設の裏で動いているのが、大山組。仕掛け人のやくざだ。
その対勢力、海原組は駅前を昔から取り仕切っている。

また、やくざ通しの争いだけでなく、一般市民も苦悩を抱えている。
今でも商店街の経営に苦しくて自殺する人もいるのに、これに加えて「ららぽーと」が建設されたら、お客は絶対にそちらに流れる。
駅前の自治会役員を務める母は、反対運動をしてきたが、このたび正式に「ららぽーと」の建設が決まった。

市長としても、駅前に斎藤氏の個展を開いたり、郊外にららぽーとの建設を決めたりで、水面下の争いが見え隠れする。

青年は、そんな話を昔から聞いているので、さほど気にならなかった。
ただ、今働いている個展に影響しなければと思っていた。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA