【やさぐれ】第二話

製本会社との派遣の契約が切れ、いよいよ齋藤氏の個展の仕事に行くことになった。

齋藤氏は、全国規模で活躍していたが、この度地元の市長に依頼されて、個展を開くことになった。
そこで、地元の商店街の一角に今年いっぱい展示することになったのだ。

なるべく地元のスタッフで運営することを齋藤氏は望み、地元に貢献できたらという意向だった。
もちろん、全国各地からお客さんは来るだろうが、故郷の人々を一番に思っていた。来てもらいたかった。

そんな趣旨だったので、青年の派遣会社にも声がかかった。

青年は、久しぶりにスーツを着て、会場に向かった。

齋藤氏は見当たらなかった。
青年は、花輪を会場の前に並べるように指示された。

そして昼が過ぎ、午後3時くらいだろうか。
黒いベンツがスーッと来て、会場の前で停まった。

齋藤氏の登場だ。

青年は、窓拭きをしながら、齋藤氏を一目見ようとちらちら車の方を見ていた。

齋藤氏は、赤い派手なスーツを着こなし、堂々と車から出てきた。
サングラスをしていたので、表情はわからないが、なんというか、そこにはオーラというものがあった。

「おまえ、なにやってんだ。こっちに来い。」

青年は同じ係員に会場内に入るように言われた。
勝手口から会場内に入ってみると、係員が全員そろって並んでいた。

後ろの方に並んで、待っていると、齋藤氏が入ってきて、みんな一斉に「おはようございます!」と挨拶をした。

「ご苦労様です。」

齋藤氏はサングラスをとった。鋭い眼光があたりを見回した。

「みなさん、開場まであと1週間です。ご協力感謝しています。引き続き宜しくお願いします。」

そう言うと、控室の方に向かった。

青年は、この人は違う世界にいる人だと感じざるを得なかった。

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