青年は、いつものように働いていた。
その日はなんやら、緊急報告があるということで、午後個展を閉め、全員参加のミーティングが行われた。
全員といっても、個展スタッフ10名、斎藤オフィスの管理者4名ほどだった。
青年は少し早めにミーティングルームに入り、一番前の席に座った。
時間が来てスタッフが全員揃うと、管理者の一人がこう言った。
「実はみなさんにお話があります。」
「みなさんのおかげで、斎藤氏個展は大盛況です。それはみなさんも感じていると思います。」
「そこで、弊社代表の斎藤の方から、このスタッフ全員に斎藤オフィスの社員として迎え入れたいという申し出がありました。」
「もちろん、この個展は継続します。当初、イベントという期間限定のものだったのですが、斎藤氏の意思で地元に拠点を設けたいという旨です。」
「みなさんには、正式に斎藤オフィスのスタッフとして、この個展で働いて頂きたい、そういった話でございます。」
スタッフたちは、いきないの話に戸惑っていたが、管理者は続けて言う。
「みなさんが所属する会社の方には、既にこの話を通してあります。あとはみなさんと私たちの契約となります。」
「1週間ほど時間を取りますので、前向きに考えて下さい。何か質問がありましたら、遠慮なく管理者に言って下さい。」
こうやって、この緊急報告は終わった。
青年は頭の中で、ららぽーとへの移転が決まったということだろうか、いや、今は仕事に集中しよう。
ここでお世話になるか、このまま派遣会社でやっていくか、それが先決だ。
1週間後・・・
また会議室にスタッフが集められた。
紙が配布され、管理者からの報告が告げられた。
「みなさんありがとうございます。スタッフ10名のうち7名が承諾してくれました。メンバーはお渡しした紙に記載されています。ご確認ください。」
表題に「斎藤オフィス 新メンバー」と書かれ、メンバー一覧に、青年の名前「西山武志」も書かれていた。