【やさぐれ】第八話

齋藤オフィスでは、選択を迫られていた。
東京の本社では、ららぽーと移転の方向がほぼ決定していた。

ただ、齋藤貴雄(齋藤氏)は決定の判断を下さなかった。
あくまでも地元の意見を取り入れたかったのだ。

地元オフィスに齋藤氏と本社から数名、地元スタッフ全員で話をすることになった。

でも実際、地元スタッフもららぽーと移転にほとんど賛成だった。
それは、街中を生きる苦しさを知らないスタッフばかりだったからである。

本社の幹部が言う。

「それでは、君たちスタッフは移転に賛成ということでいいんだな。」

齋藤氏は黙っている。

青年は、思い切って手を挙げた。

「すみません、私は反対です。」

「反対?何か理由がありますか?」

「そうですね・・・街中の商店街の人たちはどうなんでしょうか。」

「他は関係ない。ビジネスなんだから。君の意見はどうなんだね。」

「・・・」

青年は黙ってしまった。
すると、齋藤貴雄が初めて口を開いた。

「キミ、名前は何という?」

「はい、西山武志です。」

「率直な意見を聞きたい。しゃべってくれないか。」

青年は、緊張と戸惑いで頭の中が混乱していた。とにかく気持ちを話していった。

「はい、私は絵を描くのが好きで、先生の絵もいつも楽しみに見させて頂いています。そして、先生は同じ地元であり、同じ小学校、中学校を出てらっしゃる先輩でもあります。尊敬しています。その先生が描かれた絵は、この地元の人みんなを幸せにする力があります。でも、移転するとみんなが幸せにならない気がして・・・すみません、言ってることが分からなくなってきました。」

すると、齋藤貴雄は表情を変え、大笑いした。

「わははは・・」

「・・・」

「いや、バカにしてるんじゃない。この話は今日はおしまいだ。西山君、あとで私のところに来なさい。」

そう言うと、齋藤氏は席を立った。

あとで齋藤氏のところに行くと、そのまま出かけようと齋藤氏に連れられた。

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