【やさぐれ】第六話

その子は、駅の近くの家で育った。
駅前界隈では有名な、海原組に所属する父を持つ。
そう、やくざの息子だ。

母は誰なのかわからない。父と子の2人で生活していた。

そんな子が小学生3年の時、正月ということで、父とその仲間で飲んでいた。
真昼間からみんな、赤い顔をして大笑いしていた。

ちょうど昼を過ぎたくらいだろうか。

玄関の方から、大声が聞こえる。
大人たちは、顔つきを変え玄関の方を見る。

「大山組め、こんな目でたい日に!」

誰かが言う。

父は息子を守るようにして、抱きかかえる。
ドアをこじ開けて、数人の男たちが入ってきた。

ナイフや包丁を持ち応戦する。
父は子供を抱きかかえたまま、外に出る。そして、
「もう帰ってくるな。もうここはお前の家じゃない。」

そう言うと、仲間のもとへ戻って行った。

子供は理解した。
普通に歩いていき、ある家の前で立ち止まった。

ドアフォンを鳴らす。
玄関に走ってくる足音がする。

ガチャ、「お、どうした?」

小学校で唯一の親友、西山だ。

「家が無くなった。今から出かけるよ。」

「??」

「もう会えないと思う。」

振り返ろうとするとすると、服を掴んで西山が言う。

「おい、ちょっと待てよ。」

子供は振り返り、

「大丈夫だよ、なんとかなる。」

と言った。

そして、掴んだ手が緩んだすきを狙って、振り払い走り出した。
冷静だった子供は、涙をこれでもかというくらい流しながら走っていた。

どこを走ったのかも分からない。
あたりは真っ暗だ。

子供はこうして数日間放浪する。

ある夜、子供は衰弱しきって道に倒れていた。
そこへ、スーツを着た男が現れる。

「おい、大丈夫か。」

「・・・」

どうやら気を失ったらしい。男は担いで家に連れて行った。

どのくらい意識がなかったか分からなかった。
目を覚ますと、布団の上だった。

自分を助けてくれたであろう男が、聞いてきた。

「おまえ、家はどこだ?親は?」

「・・・親も家もない。」

「そうか。当分うちにいろ。面倒見てやる。」

「・・・」

「ちなみに、お前なんて名前だ?」

「俺は、鈴木竜だ。」

「お、威勢がいいな。いいやくざになるよ。」

「や、やくざ・・・」

「ああ、俺はやくざだ。大山組の神崎だ。」

「・・・」

「どうした?」

「お世話になります。」

子供は深々と頭を下げた。

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