【やさぐれ】第四話

斎藤氏が新作を発表した。
題名は「故郷」。山と海の間に垣間見える街並みを描画した、とても温かい絵だった。

そしてこの絵が爆発的にヒットする。
斎藤氏独特の描写もあるが、その画の大きさが屏風くらいの特大サイズだった。
すっぽりと故郷の街がおさまるくらいで、圧倒的なインパクトがあった。

そしてその絵は個展に置くことになり、ひっきりなしにお客さんが訪れた。

青年も絵を見る暇がない程、仕事に追われた。

そんなある日だった。
仕事を終えて帰ってみると、両親がまた気を引くような話をしていた。

「個展を持ってかれたらおしまいだな。」

「本当にどうなってるやら・・・」

聞いてみると、例の「ららぽーと」に、今青年が働いている斎藤氏の個展の移転計画が持ち上がってきたらしい。
ヒット作「故郷」の影響もあり、集客にはもってこいの材料だったのだ。

市の郊外はにぎわいを見せるかもしれない。でも、今度こそ駅前には何もなくなってしまう。
すでにシャッター街と化している駅前商店街。
「ららぽーと」の建設は、駅前商店街の息の根を止めるくらいの勢いだった。

どうやら裏で動いている大山組に軍配が上がりそうな気配だった。

そしてこの大山組と青年は関わりを持つことになる。
青年はまだそんなことになるとは思ってもいなかった。

新作「故郷」が暗いスポットライトに照らされて、静かに飾られていた。
その温かさは、とてつもなく優しいものだった。

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