【365日 後編】第十七話

神崎は、ラムネらしきものを食べ終わると、隆志に言う。

「こ・・これは、ラムネです。『ハハノイノリ』・・・です。」

隆志はわけわからずに、「ど、どういうことですか?」と聞く。

神崎の話はこうだ。

神崎が小さいころ、お金がなくてお菓子も買えなかった。それを思った母が、毎日50円の「ラムネ」を買ってきてくれた。父は仕事で帰ってこない。母は「お父さんには内緒ね。」と言いながら、毎晩「ラムネ」を買ってきてくれた。

神崎は「ラムネ」が大好きで、母が仕事から帰ってきて、買ってきた「ラムネ」を食べるのが好きだった。そして何より、その「ラムネ」を食べている時間は、唯一、母とおしゃべりができたのだ。

父は知っているはずがない。何故なら、食べ終わった空のケースも遠いゴミ捨て場に捨てていた。そのくらい慎重にしていた母と自分の秘密だったのだ。

それをなぜ、父は知っている?

隆志はそれを聞いて、「お父さんに会いに行きましょう。」と提案した。

神崎は「今更会えない。」と一点張りだ。仕方ないので、隆志は隆志の過去を神崎に話した。

「神崎さん、実は僕、飛龍会の運営する施設で育ったんです。」

「施設?」

「そう、父も母も知らない。生まれた時は施設にいて、他人に育てられた。」

「そ、そうだったんですね・・・」

「だけどね、恨んではいないんだ。むしろ感謝してる。だって、今こうして生きてるのも、施設のおかげだもんね。そして、飛龍会はその親。神崎さんが、その会長のお子さんだとはびっくりだよ。」

「・・・」

「実はね、会長さんにも会ってみたかったんだけど、忙しくてね。」

「でも確か、飛龍会は脱税で会長の進退がどうのって・・・」

「それならなおさらだ。急いで会いに行こう。」

隆志は半ば強引に事を進めた。

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