【ポイント】第一話

少し未来の話・・・都内のあるアパートの一室にて。

「・・・あぁ、母ちゃんか・・・」

部屋の中は明かりもついておらず、開けっ放しのカーテンの向こうでは、暗闇の中走る電車の音がカタンカタンと鳴り、逃げていくように消えていく。

「もう、実家帰ろうかなんて考えてるよ・・・」

携帯を持つその青年の先には、優しい声色で包むように答える声がする。

「そうか、帰っておいで。あんたの部屋はそのまま残してあるよ」

青年は歯を食いしばるようにして、言おうとしてる言葉をぐっとこらえている感じだった。少し沈黙が暗闇に流れる。しかしその優しい声は、その沈黙を受け入れるようにただただ静かに待っている。

青年はため息のような深呼吸のような息を吐き、「またかけなおすよ」と電話を切ろうとした。耳から携帯を離し、液晶画面の切るボタンを押すくらいに母の「無理しないでね」という声が聞こえたが、吹っ切るように切るボタンを押す。

液晶画面には、その空気感を無視したように『利用ポイント45P』と表示されていた。

 

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