【ポイント】第三話

一年後、栄一は地元の市役所で働いていた。所属は、『ポイント管理課 調整係』である。

いつものように朝早くから書類整理をしていると、課長から同じ調整係の新城に同行するように言われた。

先輩の新城とは話をしたことがなかった。何やら近寄りづらいというか、本当に市役所の職員か?と思わせるほどの異様な雰囲気を持つ存在であった。

勿論、今日も遅刻して出社してきた。栄一は新城のもとに行くと、

「あの、本日新城さんに同行するように課長から言われました。宜しくお願いします」

新城は、だるそうにこちらを見ると、「はいはい」と返事をした。

栄一は自分の席に戻り、途中だった書類整理を後で見てわかるように付箋をしていった。・・・とその目を離したすきに、新城がかばんを持って外に出て行こうとする。

「あ、新城さん、出かけるんですか?ちょっと待って下さい」

新城はこちらを見もせずにどんどん進んでいく。栄一はとりあえず筆記用具とノートをかばんに放り込み、後を追いかける。

 

「新城さん、どこへ行くんですか?」

街を歩く新城に栄一が質問する。新城は面倒くさそうに

「あぁ?」

と返す。

栄一はなんなんだこの人は・・・と思っていると、新城がおもむろにタバコに火をつけだした。

栄一は『えええ!?』と思い、新城に問いただそうとした。それもそうである。この時代タバコなんて吸ってる人はほとんどおらず、しかも、ここは禁煙区域、しかも歩きタバコなんてもってのほかである。

「新城さん、ポイントに影響しますよ・・・」

と言いかけたところ、新城はくわえタバコで自動販売機でコーヒー缶を買っていた。その間、灰が地面に落ちるが、新城はまったく気にしない。

そして、コーヒー缶を手に取ると、パチっとふたを開け一気に飲み干す。タバコをひと吸いすると、せいせいとした表情で、ぷはぁ~と煙を吐く。

コーヒー缶をなんの悪げもなくその辺にポイ捨てすると、今度は地面にタバコを落とし、靴で火を消している。地面には焦げ跡だ。

栄一はその光景に『あぁ・・・』と思うばかりだった。すると新城が声をかける。初めてのまともな会話だ。

「おいおまえ、海辺公園の視察でも行くか」

栄一は、コーヒー缶とタバコとその焦げ跡の後始末をしたかったが、「はぁ」と新城についていく。

新城の後を少し歩いていくが、後ろが気になり振り向くが、待ち構えていたように数人の大人が片付けをしに群がっている。『ん?』と思ったが、『まあ、ポイント社会では当然の出来事だろう』くらいにしか思わなかった。どちらかと言うと自分が片づけられなかった罪悪感の方が強かった。

 

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