海辺公園は、その名の通り海辺に作られた公園である。木でできたベンチや机、日よけになる場所もあり、芝の広がる気持ちいい場所だ。
年配者や小さい子供を連れた数組のママたち。平日なのにカップルも2組くらいいた。
栄一は新城に問いかけた。「ここでマイナスポイント行為を注意するんですか?」
「あ?ただのひと休みだけど」
栄一は驚いた表情をすると、またもや新城がタバコを取り出し始めた。さすがに栄一は正そうとキリっと言う。
「新城さん、さっきからいけないですよ」
「ん?タバコか?」
「そうです。さっきの行為も市の職員としてどうかと思います」
新城は、出したタバコをしまいながら、まじめな顔で言う。
「やっぱ、ポイントか?」
「そうです。新城さんみたいな生活をしていたら、ポイントがマイナスになりますよ」
新城は、遠くを見つめ、少し間を置くと、
「お前はポイントがマイナスになると思うか?」
「え?」
「少し教えてやるよ。ポイントってのはな、マイナスになんかなりはしない。マイナスゾーンに行った時点で、凍結されるんだ」
栄一はいきなりの言葉にゾッとした。「と、凍結って・・・」
新城は落ち着いた声で言う。
「お前を連れて行かないといけない場所があるみたいだな」
栄一はこの社会の裏の部分を感じ、「もしかして、ポイント凍結と関係あるんですか・・・」
「そう、まあその前に飯でも食うか。おまえ高級料理店には入ったことあるか?」
高級とつく店なんて自分の身分(ポイント)で入れるわけなかった。料理店もそうだが、ブランドものその他すべてお店の前でポイントにロックがかかり、入店すら許されない。
栄一は新城を見ながら、なんだこの人は?と思わざるを得なかった。
すると新城が言う。
「そうだな、唯一、マイナスポイントになれるケースがあるな。まあ俺たちは融資ポイントと言ってるが」
新城と同行して初日、栄一は自分のポイントが侵されるような危惧を抱いた。しかし、ポイント凍結と融資ポイント、その言葉の意味を知りたい気持ちはあった。
そして、この新城という男の悲しげな目がいつまでも忘れられなかった。