【ポイント】第七話

そこは病院と同じ匂いのする白い壁と床で作られた無機質な空間だった。新城は受付を済ますと、入所カードを手渡してきた。栄一は恐る恐る聞いてみた。「ここは、どこなんですか」

新城は答える。「ポイント凍結された者の来る場所・・・国立隔離保護施設だよ」

「隔離保護施設・・・表には何も看板が出ていなかったですが・・・」

「それはそうさ。名前なんてあってないようなものだし、この中で起きていることが世間に知れたら大変だからね」

栄一は昔『刑務所』という収容所があったと聞いたことがあるが、それに似たようなものかと感じていた。外は高い外壁に囲まれ、とにかく建物全体がでかい。いったいどんな施設なのか・・・それは新城にゆだねるしかなかった。

新城が言う。「とても一日でまわれないし説明もできないから、監視室に行こうか」

「は、はい」

 

監視室というと暗い部屋にモニターがたくさん並んでいるイメージがあったが、意外と明るく、オフィスのように机と椅子が並び、各机にはモニターと資料のようなものが乱雑に置かれていた。

監視室に入ると、新城はある人物に軽く会釈をし、会議室のような部屋に案内された。その人物が「企業秘密もありますので、お見せできる範囲でですが・・・」と新城に言っているのが聞こえた。

会議室には少し大きめのモニターが4つほど設置されており、そのモニターの上に部屋の名前?みたいなものがそれぞれ書かれていた。

・説明室

・労働室

・提供室

・安楽死室

その案内人の話はこうだった。現在、人はポイント制度により管理されている。しかし、それもゼロになってしまうとポイント凍結となってしまう。要するにどんなサービスも受けられないし、この社会では身動きできなくなる。そういった人たちがこの施設に入れられる。

そしてその後の人生をこの隔離保護施設で選択しながら決めていく。

企業や宗教、身内や個人でもでもいい、自分のしたことをいかに正当化し、今後の人生にプラスに働くことを説明する部屋が説明室。融資の対象となる。

とにかく、日銭(ポイント)を稼ぐために、労働をする労働室。

臓器や血液、身を削って生活の糧にする提供室。

そのどれもできなくて、安楽死する安楽死室。

 

各モニターはぼやけているが、作業着のようなものを来て動いている人の姿がなんとなく見える。たださすがに提供室と安楽死室は部屋だけ映っていた。人物はいない。

説明が終わると、新城は栄一に言う。「そう、だからお前も当たり前のように使っているポイントも凍結する可能性があるんだよ。お前だけじゃない、ポイント社会の人間全員に言える」

「・・・」

栄一は現実を目の当たりにし驚いていたが、ずっと気にかかっていたことを新城に聞いてみた。

「でも新城さんは、どうしてポイントをあんな風に使っているのか、そして使えるのか・・・どうしてなんですか」

 

新城が視線を遠くに向けて言う。

「俺は融資ポイントを受けているんだ。国からな」

栄一は驚きを隠せなかったが、つい口走る。「そんな簡単なものなんですか。ポイント凍結から復帰したんですよね。しかも市の職員だし・・・」

「そうだな、もう一つこの施設のルールで大切なものがある」

案内人に目配せし、仕方ないという表情を確認してから、新城は話す。

「ここに来ると唯一貰えるものがある」

「・・・」

「それは食べ物でも水でもない。日数だ」

「日数?」

「10日間だけ貰えるんだ」

栄一は何のことやらわからずにいた。食料ではなく10日間??

すると、新城が少し一服するかと休憩室に行こうと促す。栄一もたくさんのことばかりで疲弊していた。

案内人が言う。「新城さん、いいんですか。そんな個人的な事を話しても」

新城は「いずれ知ることになるんだから、いいよ。ポイント調整係に配属されたんだからね」と、苦笑いしながら歩いて行った。

栄一は両目をぎゅっと閉じて、目を覚ませという仕草をとり、再び大きな目を見開き、ふぅ~と深いため息をつき、新城の後を追った。

 

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