【ポイント】第十一話

栄一と新城は休憩室に来た。窓からは夕日がさし、一日の終わりを告げていた。

新城は窓の外を見て黙っている。栄一が頭を整理しながら質問をする。

「新城さんが国から融資ポイントを得ているってどういうことですか?」

新城は深いため息をつき、話し始めた。

昔、新城という男の子が、暴力を振るう父親を金属バッドで殴り、この施設に入ってきた。しかしその男の子は、同部屋のおじさんに10日間のうち9日間を贈与した。結果、安楽死までの9日間を食料と水もないままベッドで過ごすことになった。

そして9日目の終わりに、国からの使いから面談の要請を半ば強制的に受けることになった。新城の行動はまれにみるものだったのだろう。

栄一はそこまで聞くと「じゃあその新城という男の子が新城さんの過去だったという事・・・?」

新城は、すこし吐くように笑い言う。

「いいや違う。その新城という男の子は、10日目の面談中に椅子に座ったまま死んでいた」

栄一はまた頭の中が混乱してきた。じゃあここにいる新城さんは、その男の子の親族か何かなのか・・・?

目の前にいる新城がキリっとこちらに顔を向け言う。

「俺はただの公務員だ。その新城という少年の話の続きを演じているただの公務員だ。こういった施設には伝説的な話が必要らしいからな・・・」

少し間を置き、新城は話す。

「随分と前の話になるが、国はお金という概念を一般市民から切り離そうとし、ポイント制度というものを導入した。しかし、何も変わりはしなかった」

目の前にいる新城はタバコに火をつけた。そのタバコをひと吸いするとじっと見つめ、「これは俺の分のタバコだ」と静かに言った。

そして、落ち着いたように言う。

「俺は新城として、特権を与えられた。それがポイント融資だ。でも、俺のやり方では変革をもたらすほどの力はなかった。俺は善悪の悪の部分を推し進めてきた。それがポイント制度のバランスだと思っていた。まあ結果としては現状維持のままだ。

上の奴らも模索している。そこでいくつかの候補が挙げられた。栄一、お前もその一人だ。第三の新城役というわけだ」

栄一は頭の中が混乱していた。ただ目の前に突き付けられた現実を受け入れられるのは、現時点では無理という事実だけだった。

平成30年11月10日 「ポイント」第一部 完

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