【ブリザード】第二話

太郎がA棟に向かうと、途中で坂田教授の助手の井上がまわりを気にしながら小走りに寄って来た。

「太郎くん、こっちこっち」

井上は太郎の袖をつまみ、引っ張りながら言った。太郎は困惑気味で「ど、どうしたんですか」と聞くが、井上は静かにしてという仕草をしながら太郎を連れていく。

太郎は井上の車に乗せられると、そのまま生物研究センターから連れ出された。少しすると井上が「これ飲んで」と錠剤を突き出してきた。太郎は「え?」と思ったが、太郎が聞き返すよりも早く「坂口教授から預かったもので、クローンの君にちょっと問題があったみたいだ」と深刻な顔をして井上が言う。太郎は体調調整の時にいつも飲む薬の類かなと思い、抵抗なくリュックからペットボトルの飲み物を取り出し、一緒に口に含み飲み込んだ。

数十分ほどすると、太郎は頭の中がぼやっとしてきて、いつの間にか寝てしまった。何やらまわりで物音や人の声がする。ざわざわしているが何を言っているのかわからない。

太郎はそのままある施設の地下深くにある一室の部屋に運ばれ、ベッドに寝かされた。その施設は全体がシェルターになっており、外部のものからいっさい遮断された自立した施設だった。太郎は昏睡状態でそこへ運ばれ、その部屋の中に監禁されたのだ。その部屋はベッドから生活用品からトイレ、シャワー室もあるが、壁や天井は病棟のように冷たい白色の部屋だった。

太郎は一瞬目を開けたが、ぼんやりと天井を見てまた眠りに付いてしまった。この状況を考える余裕すらなかった。

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