何にでも厳しく、威厳のある父がいた。
家族は、その父の言うことに従い、反論することはなかった。反論できなかった。
そんな厳格な父がある買い物をしてきた。
それは「電子レンジ」だった。
母は、「あら?電子レンジなら、うちにありますけど・・・」と言うと、父は言う。
「この電子レンジは、オープン機能もついているんだ。それで1万円だよ。」
母は、さすが、買い物も完璧にこなす父だと思っていた。
数日後、母は、電子レンジを見回していた。
子供が、「どうしたの?お母さん」と言うと、母は言う。
「お父さんがね、オーブンの機能があるっていうんだけど、どこにその機能があるのか探してるの」
そんな時、父が帰ってきた。
「なに?オーブンの機能?オーブン専用のボタンがあったぞ。どこを見ているんだ。」
父が電子レンジを見て、ほらあったとボタンを指差す。
母と子は、それを見て絶句した。
底に書かれていたのは、「オーブン」ではなくて・・・「オープン」だった。
ドアオープンだ。
二人は黙っていた。そして何事もないように日が過ぎていった。
父のなにかの記念日の時、母と子はプレゼントをした。 中身は「老眼鏡」だった。