ハゲ男の高校生活も終わりを告げようとしていた。
高校生最後の行事、そう、卒業旅行に行くことになる。
毎年恒例の京都、奈良への2泊3日の旅行だ。
ハゲ男は、気合を入れるためにスキンヘッドにしていた。
もう彼の中では、髪型・・・いや容姿はさほど関係のないものであった。
どちらかと言うと、髪の毛が邪魔?みたいな感覚だった。
ヤンキーも黙る、ハゲ男の行動に、誰も何も言わなかった。
そして、卒業旅行当日。
バスで、京都へと学生たちは向かった。
現地につくと、いくつかの班に別れての行動だった。
ハゲ男の班は、とにかくお寺を回ることを計画していた。
いくつか、お寺を回っている時だった。
後ろから大きな声がかかってくる。
「喝っ!!」
みんなは振り向いた。
あるお坊さんだった。
「おい、きみ、ちょっと話があるのだが。」
それは、ハゲ男に向かって言っていた。
どうやら、お坊さんへの勧誘だった。
ハゲ男のスキンヘッドもそうだが、体つきもガッチリしている容姿をみて、お坊さんが勧誘してきたのだ。
高校卒業というこの進路を決める時期というのも狙いなのかもしれない。
話をしていると、数人のお坊さんがやってきた。
お坊さんに囲まれたハゲ男。
しかし、ふと見ると、ハゲ男もまたお坊さんの中に溶け込んでいた。
その容姿と風格。そして、何よりも物おじしないその姿勢だった。
すると、お坊さんのひとりが、ハゲ男に何やら紙の包みを渡した。
ハゲ男は、何回かうなづいて、班の人のところへ来た。そして言う。
「ちょっと。俺は別行動するよ。先に行ってくれ。」
同じ班の人は、なんのことやらわからない。
とにかく、ハゲ男には逆らえない。
その場を逃げるように去っていった。
担任の先生に連絡したのだが、その日、ハゲ男は宿泊先のホテルに返ってこなかった。
巧妙なお坊さん。そしてハゲ男の決断がこのあと決まる。
それは、高校生最後の卒業旅行、第一日目であった。