そう、彼は、「カツラをお洒落に」を流行させたカツラカンパニーの社長。
もちろん、40歳のハゲのおっさんだ。
しかし、今は白と青色の入り混じったイタリアンをイメージさせるオシャレなカツラをかぶっている。
彼がカツラを流行らせた・・・いや、ファッションの一部と根付かせるまでの壮絶な物語を書いていこうと思う。
それは、彼が高校生の時まで遡る。
彼は、頭部の先端に丸い形の毛の生えてない部分があった。
そして、剃りこみのように正面から見ると鋭角に切れ目が入っていた。
そう、彼は若くしてハゲだった。
高校に入学しまもなく、不良の先輩に目をつけられた。
「お前、何剃りこみ入れてんだよ。」
そして、先生にも呼び出された。
「◯◯くん、剃りこみは高校生らしくないな。」
いずれも、ハゲなんですとは言わなかった。
「すみません。でも、自分、やめられないッス。」と言い切った。
それは、彼の性格だった。ハゲが恥ずかしいわけではない。
どちらかと言うと、なんでそんなことを気にしなくてはいけないのかという思いだった。
とうとう、不良の先輩にはボコボコにされた時もあった。
先生には、何かしら目をつけられた。
そして彼は、髪型を変えた。
しかし、ハゲを隠す(剃りこみを隠す)髪型ではない。
逆に、目立つようなリーゼントに仕上げたのだ。
そして、つっぱり高校デビューが始まったのだ。
彼は、どちらかというと、おとなしめの目立たない子だったが、そのリーゼントの一件から、喧嘩上等の目立つ子になった。
しかし、それは序章に過ぎなかった。
彼のハゲは人生を変えた。良くも悪くもだ。
ただ、本人はさほど気にしていなかった。自分がハゲだということを。