【やさぐれ】第一話

正月のある日だった。 ピンポーンと家のドアフォンが鳴る。 少年は玄関のドアを開けた。 そこには、親友の鈴木が立っていた。「お、どうした?」 「家が無くなった。今から出かけるよ。」 「??」 「もう会え…

【やさぐれ】第二話

製本会社との派遣の契約が切れ、いよいよ齋藤氏の個展の仕事に行くことになった。 齋藤氏は、全国規模で活躍していたが、この度地元の市長に依頼されて、個展を開くことになった。そこで、地元の商店街の一角に今年…

【やさぐれ】第三話

個展が開場し、数週間が経った。会場には子供から大人、老人まで来場があって、大盛況だった。 青年は、会場警備をしていた。齋藤氏の絵画を毎日見れることで、生き生きと仕事に取り組んでいた。 齋藤氏は、開場の…

【やさぐれ】第四話

斎藤氏が新作を発表した。題名は「故郷」。山と海の間に垣間見える街並みを描画した、とても温かい絵だった。 そしてこの絵が爆発的にヒットする。斎藤氏独特の描写もあるが、その画の大きさが屏風くらいの特大サイ…

【やさぐれ】第五話

青年は、いつものように働いていた。その日はなんやら、緊急報告があるということで、午後個展を閉め、全員参加のミーティングが行われた。 全員といっても、個展スタッフ10名、斎藤オフィスの管理者4名ほどだっ…

【やさぐれ】第六話

その子は、駅の近くの家で育った。駅前界隈では有名な、海原組に所属する父を持つ。そう、やくざの息子だ。 母は誰なのかわからない。父と子の2人で生活していた。 そんな子が小学生3年の時、正月ということで、…

【やさぐれ】第七話

大型商業施設「ららぽーと」の進出決定! 齋藤画伯の絵画展示会場も移転も視野 地元の新聞には、大きく見出しが書かれていた。 朝起きると、母がその記事を読んでいた。ふと自分に気づくと声をかけてきた。 「今…

【やさぐれ】第八話

齋藤オフィスでは、選択を迫られていた。東京の本社では、ららぽーと移転の方向がほぼ決定していた。 ただ、齋藤貴雄(齋藤氏)は決定の判断を下さなかった。あくまでも地元の意見を取り入れたかったのだ。 地元オ…

【やさぐれ】第九話

齋藤氏に連れられて、小高い丘のあるこじんまりとした店に行った。そこは、高級住宅街にある隠れ家のような、しゃれた会員制の店だ。 「人目がつくからね。こういう店にしか入れないんだよ。」 「いらっしゃいませ…

【やさぐれ】第十話

そこでは、ららぽーとの人間が2人いた。料亭の一室だった。 齋藤氏と取締役と青年が出席した。青年は、部屋に入る。 「・・・!」 そう、2人のうちの1人は、あの鈴木竜だった。 しかし、気づいていないのか、…